最も奇妙だったのは『ジョーカー』で主演男優賞を受賞したホアキン・フェニックスのスピーチだろう。『ジョーカー』を擁護する人たちは、この映画を不公平さと抑圧された階級の怒り、精神の病、そして医療制度を巡る有意義な意見表明として評価している。フェニックスのスピーチは人種差別と性差別、人類が自然を破壊しているという問題提起で始まった。
続けて環境破壊の話になるのだろうと期待していたが、彼は乳牛がいかに悲惨に扱われているかについて詳細に語ることを選んだ。ヴィーガンのフェニックスにとっては、人種的偏見や男女格差、自らの居場所であるハリウッドだけでなく国全体をもむしばむ権力の濫用よりも、この話題のほうが重要だったようだ。