ヒトの免疫システムに代表される白血球には、ナチュラルキラー細胞やT細胞と呼ばれるリンパ球がある。ナチュラルキラー細胞は、がん細胞やウイルスに感染した細胞を攻撃して排除する。T細胞となる前の前駆細胞は、「胸腺」と呼ばれる臓器の中で自分自身の細胞を攻撃しないように“訓練”を受け、いくつかの型に分化する。
こうしてつくられたT細胞のなかでも代表的なものが、ウイルス、がん細胞、移植された臓器の細胞といった体にとって異物と認識されたものを破壊する「キラーT細胞(CD8+T)」と、病原体認識シグナルを送って免疫細胞を活性化させる「ヘルパーT細胞(CD4+T)」だ。
COVID-19患者の血液のなかでは、総T細胞数(CD3+T)、ヘルパーT細胞(CD4+T)、キラーT細胞(CD8+T)、ナチュラルキラー細胞が有意に減少することがわかった。注目すべきは、ヘルパーT細胞の減少は比較的ゆるやかだったが、キラーT細胞のほうは著しく減少したことである。
また、COVID-19患者において「ヘルパーT細胞(CD4+T)/キラーT細胞(CD8+T)」の比率が著しく上昇したことから、キラーT細胞のほうがより新型コロナウイルスに影響されやすいものと考えられている。つまり、COVID-19を発症すると、ウイルスに対抗するはずの“免疫の戦士”の数がどんどん減ってしまうのだ。