2009年6月、エールフランス447便はブラジル沖で荒天に遭い、228人の乗客と乗員を乗せたまま消息を絶った。フランス政府は2年かけて残骸を捜索したが、見つからなかった。
捜索に4度失敗した後、政府は数学者のチームを招聘した。チームはAIを使い、新たな情報が入るたびに確率予測を更新するというベイズ統計学の手法を適用した。ここでの確率とは、機体が海底の特定の場所に沈んでいる見込みである。
驚くことに、チームはたった1週間で機体の場所を特定した。どんな方法を使ったのか。最初にAIを活用した予測で、最も見込みの高い捜索エリアを特定した。ここは政府がすでにカバーしていた海域だ。
決め手となったのは、次の問いを投げかけることであった。飛行機のビーコン(水中に沈むと作動する音響発信機)が機能しなかった可能性があり、そのために政府は墜落現場を見落としたのではないか――。事実、ビーコンの故障というこの仮説は正しかったことがわかり、残骸は初期の予測で特定された場所の近くで発見された。