トヨタが米国市場向けの高級車の開発に乗り出した時、同社のチームは日本のオフィスで知恵を絞って「完璧なデザイン」をひねり出そうとはしなかった。自社の既存の車種に関する既存顧客のデータをひっくり返して、正解を見つけようともしなかった。
トヨタは、デザイナーとマネジャーをカリフォルニアに派遣して、ターゲットとする顧客層(高所得層の米国人男性)を観察し、そうした人たちへの聞き取り調査を行わせた。それを通じて、そうした顧客層がどのような自動車を欲しがっているのかを把握することが狙いだった。
こうした調査によって得た知識と、トヨタの文句なしのエンジニアリング面の強みが合わさって、まったく新しい方向性が切り開かれた。米国市場に向けて高級車を送り出すことに成功したのだ。それが「レクサス」である。