ニュートンは同時代の科学者たちと功績争いを繰り拡げていた。例えば、微積分法の功名をめぐり裁判で25年間も闘ったほどである。
ところが、その裁判相手から休戦の申し出を受け取ったニュートンは意外な行動に出る。それまでの頑固な態度を翻し、素直にその論敵の功績を認めたうえで、後にいつまでも語り継がれることになる次の言葉を送ったのだった。「もしわたしがほかの人よりも遠くを見ているとしたら、それは巨人の肩の上に立っているからだ」。すなわち、学問とは多くの研究の蓄積の上に成り立つものであるから、自分の功績を誇ることに何の意味があろうかと謙遜してみせたのである。こうして和解に至ったふたりだが、すぐに別の話題でケンカを始めてしまい、その後生涯にわたっていがみ合ったという。