“そもそもトラックにとって「急ブレーキ」は“ほぼ”事故といってよい緊急事態だといえます。大型トラックに使われているエアブレーキ、普通の減速程度ならコントロール可能です。 しかし急ブレーキを踏むと、急激にブレーキ圧が高まってしまいます。乗用車なら割り込みをされた際、急ブレーキと通常ブレーキの中間的な「丁寧な急減速」も少しのテクニックがあればできます。 また私(国沢光宏)も大型免許を持っており、たまにエアブレーキ車のハンドル握りますが、滑らかな急減速は実際には不可能だと思います。 したがって乗用車だと前に割り込んでもホーンを鳴らして抗議するくらいで済むものの、何トンにもなる荷物を積んだ大型トラックだとそうはいきません。加速していれば追突事故の可能性も高まります。乗用車ユーザーからすれば「危なければ急ブレーキを掛ければいいじゃないか」と考えるかもしれません。 もちろん急ブレーキを掛ければ追突は免れる可能性もありますが、そうなるとかなりの確率で「荷崩れ」を起こすのです。また、荷台をけん引するようなトレーラータイプはケツを振ってしまう可能性もあり、大惨事を起こしかねないのです。 高速道のSAで休憩しているトラックドライバーに話を聞いてみると、「乗用車とは違い、本当に怖いです。急には止まれないので安全マージンを取って車間も空けてたりします。だから急な割り込みはヤメて! といいたいです。こちらは大事な荷物を預かっているので」と、多くのドライバーが同じようなことをいっていました。 トラックが運んでいる荷物は多種多彩。精密機械を積んでいるトラックなど、荷崩れすると1億円規模での損害が出てしまいます。そこまで高くなくても、1000万円単位の損害など珍しくなく、急ブレーキ1発で1000万円です。”