将棋の最新形は、駒の損得や詰みに直結しやすいものが多く、研究を知らないとそのまま押しきられてしまうことも珍しくない。しかし、囲碁の最新形は、将棋と質が違うようだ。
「最新形を知らなくても、碁は打てます。囲碁の戦いは隅から始まりますが、最新形はひと隅の部分的な格好なんです。盤全体で決着がつくわけではないので、隅の攻防がわからなければ「手抜き」、つまりほかの場所に打てばそれなりに戦えます。ただ、井山さんはそういうところで絶対に逃げません。常に妥協しないで、勝ち上がってきた人です。
ちなみに、中国や韓国の囲碁界は、将棋界と同様に集団研究が盛んで、自分ひとりでよい手に気づいても、みんなで研究して共有します。日本の囲碁界だと、大事な対局のためにとっておく人が多いでしょう。どっちが発展するかといったら、みんなで研究してレベルを上げていったほうがいいということになりますね」