現在はRaTG13の遺伝子配列が、COVID-19を引き起こすSARS-CoV-2と96パーセントが一致することがわかっている。新たに出現する人間の感染症のうち4分の3は、野生動物か家畜によって媒介されたものだ。
コウモリは進化によってウイルスに対する高い耐性を獲得しており、大半のコロナウイルスの宿主だと考えられている。だが、SARS-CoV-2がコウモリから人間に直接感染した可能性は低いとされている。
哺乳類のなかで唯一空を飛ぶコウモリは、ウイルスを広範囲に伝播する。そのうえ、中国や東南アジアの一部では食用にされてきた歴史がある。頑強な免疫系をもつコウモリの体内で、ウイルスはより早く増殖するように進化すると研究者たちは考えている。進化したウイルスが人間を含むコウモリ以外の動物の体内に入ると、宿主をあっけなく殺してしまうのだ。
「新型コロナウイルスを仲介した中間宿主がいる可能性が非常に高い」
16年と17年には、中国の4つの農場で、25,000頭の子豚がキクガシラコウモリ由来のコロナウイルスに感染して死んだのだ。
SARS-CoV-2とRaTG13の遺伝子配列の類似性が高いことから、起源となったウイルスは、コウモリに害を与えず体内に長期間存在できると考えられる。
SARSの場合はジャコウネコが中間宿主だったと考えられており、12年にサウジアラビアで初めて確認された別のコロナウイルスによるMERS(中東呼吸器症候群)の場合は、ラクダが中間宿主だったと考えられている。
コロナウイルスは、唾液や粘液、糞便(コウモリの場合は堆積した排泄物が「バットグアノ」と呼ばれる)など、体液の飛沫がほかの動物の鼻や眼、口に入ることで伝染する。
最新の候補として挙げられているのが、大量に売買されて絶滅の危機に瀕しているセンザンコウだ。体がうろこで覆われた昆虫食の哺乳類で、肉が珍味とされている。うろこは漢方薬の原料として人気が高く、母乳の出をよくするほか、喘息からがんまで、あらゆる病気に効くと信じられている。
遺伝子配列がSARS-CoV-2と99パーセント一致するコロナウイルスをセンザンコウから発見したと発表した。
「新たな感染症は、野生動物のハンターを通して広がることも、市場で野生動物と接する人を通して広がることもあるでしょう。どちらにしても言えることはひとつです。野生動物は野生のままにしておくべきなのです」