勝者羽生のインタビューが終わり、記者に感想を求められた時だった。「うっ」と言葉に詰まると、右手を小さく振って質問を遮り、席を外して洗面所の方へ向かった。数分後、戻ってきた木村は真っ赤に目を腫らし、ハンカチを握りしめていた。

あの涙から3年。さらに年を重ねても戦い続けた。「年齢はとってしまったから仕方ない。疲れも出るし、戸惑いつつやっていました」。それでも、脂の乗った29歳、時の名人でもある豊島将之王位を相手に、がっぷり四つで渡り合った。そしてこの日、勝って涙を流した。

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