コンピュータ業界では長らく、IBMなどの製造・販売を行うメーカーが価値を獲得していた。しかし、バリューチェーンを構成する各機能の分業化が進み、また多くの部品メーカーや互換機メーカーが参入したことで、オペレーティング・システム(OS)を提供するマイクロソフトやマイクロプロセッサーを提供するインテルといった、バリューチェーンの上流に位置するサプライヤーに価値が移転したことはよく知られている。
これとは対照的に自動車業界では、多くの完成品メーカーや部品メーカーが参入して激しい競争に直面しながら、完成品メーカーからサプライヤーに価値の移転は起きていない。この違いはどこから生まれるのか。ジャコバイズは、価値が移転するかどうか、価値が移転するとしたらバリューチェーンのどこへ向かうのかを明らかにしたうえで、企業は4つの方法で影響を及ぼすことができるという。
第1に、代替の効かないプレイヤーになること、第2に、製品のエンドユーザーに対する「品質保証人」になること、第3に、エンドユーザーのニーズの変化に忠実に従い製品デザインを行うこと、第4に、成長ストーリーを意識して、自社のポジションをバリューチェーンの上流へ戦略的に移動することである。
そしてジャコバイズは、ある産業での成功とは、競争優位性の創出よりも、バリューチェーンの中で自社に価値を移転できる能力で決まると主張した。