電離放射線が人の健康に及ぼす影響の尺度となるのが、シーベルト(Sv)という単位だ。人間は1Svの放射線を短時間に吸収すると健康に深刻な影響を受け、それが数Svになると死んでしまう。一方、その1000分の1に相当する1ミリシーベルト(mSv)ならまったく影響はない。例えば、胸部CT検査で浴びる放射線は7mSvだ。長期的な被曝への懸念は残されており、少量の放射線によるがんなどの発症リスクの増大に関しては科学的な議論の余地がある。がんとの関係が明確に示されている年間被曝線量の最低値は100mSvだ。日本政府は、避難地域の年間積算線量が20mSvを切った段階で住民の帰還を認めるとの基準を定めた。大熊町で閉鎖が解除された地域の線量も、おおむねこの程度だった。