COVID-19にかかったことが証明されたとしても、新型コロナウイルスに対して免疫ができたことにはならない。「抗体がある=免疫獲得」ではなく、それには「中和抗体」と呼ばれるSARS-CoV-2に特化した抗体とその量をみる必要がある。
中和抗体とは、特定の病原体に感染後、それに対抗すべく生成される限定的な獲得免疫のことで、その毒性や感染力を減衰または消失させてくれる。新型コロナウイルスに対抗する中和抗体は、体内に侵入したウイルスの表面にあるスパイクたんぱく質に結合し、細胞への感染を妨げる。
多くの患者は発症から10~15日後に中和抗体の量がピークを迎え、退院から2週間後も安定していたことがわかった。抗体の量は年齢に関連しており、高齢者グループは若者グループの3倍以上であったことが報告されている。
また、中年・高齢者グループは自然免疫の活性を示すリンパ球の値が低く、炎症の度合いを示すC反応性タンパク質(CRP)の値が若者グループよりも高かった。このことから研究チームは、年齢が高くなるにつれ、より高いレヴェルの中和抗体が治癒には必要ではないかと推測している。
興味深いことに、約30パーセントの患者からは非常に低いレヴェルの中和抗体しか検出されていない。10人にいたっては、検出可能な最低レヴェルを下回っていたという。
研究チームは、検出するうえで十分な量の抗体を獲得しなかった10人の患者について、「T細胞やサイトカインを含むほかの免疫反応が回復に寄与している可能性がある」と、プレプリント(査読前)の論文で説明している。つまり、白血球やリンパ球などの自然免疫が、十分な抗体ができる前にウイルスを撃退した可能性である。