ヤン老人は北京で物乞いをして暮らしている。しかし2015年、北京の人々が突如として現金を持ち歩かなくなったため、彼の人生は劇的に変化した。一夜のうちともいえる唐突さで、中国の人々がウィーチャットペイやアリペイといったアプリをダウンロードし、日常生活にモバイル決済を取り入れたのである。
だが危機に直面し、彼は順応した。まず、金を集めて小米科技(シャオミ)の安いスマートフォンを手に入れた。次に、自分のウィーチャットペイとアリペイのアカウントのQRコードを印刷したボードを作成した。そして定位置である鼓楼大街駅の外に戻ると、そのボードを首から下げ、スマートフォンを地下鉄のWi-Fiに接続し、待ったのだ。
彼に何か支援したいと思う人は、もはやポケットに手を入れて小銭を探す必要はない。スマートフォンのモバイル決済アプリを開いて、ヤン老人のボードに書かれたQRコードをスキャンし、いくらかの金額を送ればよいのである。彼が受け取る施しの平均額は1~2人民元から3~5人民元に増えた。ほぼ300%の増加である。デジタルにアップグレードしたことが奏功したのだ。