『アイリッシュマン』の上映時間は210分もある。『アベンジャーズ:エンドゲーム』や『ロード・オブ・ザ・リング』のどの作品よりも長く、最近公開されたハリウッドの作品とは違って、『風と共に去りぬ』のようなクラシック黄金時代の作品のようだ。しかし、間延びしていない。リズム感があり、いくつもの大事な瞬間に向けて高まっていき、最高潮に達する緊張感がある。

それらはまさに、日常的な気を散らせる何かで台なしにされてしまうような重要な場面といえる。例えば、デ・ニーロ演じるシーランが道徳的なジレンマに苦しむシーンで、電車で移動中のあなたは降りる駅に着いて一時停止ボタンを押すことになるかもしれない。ペシとパチーノが共演する緊張の場面では、誰かからWhatsAppのメッセージが届くか、オーブンのタイマーが鳴り出す。

きちんと時代考証された豪華な小道具と大がかりな撮影にもかかわらず、この作品を観る場所は映画館ではない。あなたは自宅のリヴィングルームで、通勤中のスマートフォンで、または少しずつ数夜に分けて自分のベッドでノートPCを開いて、この映画を観る可能性のほうがずっと高い。

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