その菌株にはすでに抗生物質「ヴァンコマイシン」への耐性があった。この抗生物質は従来、治療の最終手段であると考えられていたものだ。

一方で、「ダプトマイシン」の影響を受けやすいことも判明した。女性の発症から1年前の2003年に米食品医薬品局(FDA)から認証されたばかりの強力な新薬である。ダプトマイシンの処方により、女性は帰宅できるまでに回復した。

ところが2週間後、女性は病院に戻っていた。今度は高熱があった。医療チームが試みた治療は何も効き目がなく、女性は亡くなってしまったのである。

エンテロコッカスは本質的には危険な細菌ではない。ほとんどの人間の腸にみられる常在菌だ。しかし、一部のエンテロコッカスは、「ヴァンコマイシン耐性腸球菌(VRE)」と呼ばれる毒性をもつ型に進化しており、毎年54万人以上の米国人が感染している。

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