酒米には最高級の山田錦だけを使用することと、1年目は精米歩合50%と45%の大吟醸で勝負したが、誰もやったことのない精米歩合25%に挑戦することを決めた。

 口で言うのは簡単だが、玄米を芯だけ残して磨くには高度な技術が求められる。長時間磨き続ければ米が乾燥し、割れてしまえば酒に使える代物ではなくなる。次は25%まで磨いてほしいと杜氏に伝えると反対されたが、無理は承知で押し切らせてもらった。

 だが、それからしばらくして別の酒蔵が24%の大吟醸に成功したという話が飛び込んできた。私たちが25%に挑んだ理由は、それが日本一低い精米歩合だったからだ。競合が24%ならば23%以下に挑むしかない。当然杜氏は反対したが、中途半端な日本酒では意味がなく、その要求も飲んでもらった。

 そこからは試行錯誤を繰り返し、最初の純米大吟醸に成功してから2年後の1992年、精米歩合23%以下の「獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分」が誕生した。この看板商品を世間に認めていただいたことで、純米大吟醸・獺祭の名前が日本に知れわたるきっかけとなった。

更新情報知らせます はい 不要