ライアットゲームスは新しいシュータータイトル『VALORANT』のベータ版をリリースする際に、有名な配信者にゲームをプレイしてもらうことによって初期の認知を獲得しようと考えた。ただし、このとき同社は配信者に金銭を支払ってプレイしてもらうのではなく、代わりに「ベータ参加権を配布する権利」を付与している。つまり、配信者のプレイ動画をTwitchで視聴することで、視聴者はランダムにベータ参加権を獲得できるというわけだ。新作タイトルのベータテストに参加したいユーザーは、こぞって配信者の動画を視聴した。
このマーケティングは動画サーヴィスのハックの一種だった。ベータ版に参加したい(ゲームをプレイしたい)ユーザーを動画視聴者に変換し、VALORANT関連動画の視聴者数を底上げする。これにより、VALORANTの動画はTwitchのランキングで上位に表示されるようになり、おすすめ動画に掲載されやすくなる。こうして培養された“流行の空気”は、さらなる配信者と視聴者をVALORANTに巻きこんでいくのだ。
ライアットゲームスのマーケティングは驚くほどの成果を上げた。VALORANTプレイ動画の最高同時視聴者数は170万人というTwitch歴代2位の数字を記録し、ベータテストの段階でVALORANTは人気ゲームの仲間入りを果たしたのだ。