標準とされる血中酸素濃度は95〜100パーセントで、90パーセントを下回ると低酸素状態だと診断されることになる。たいていの場合、低酸素状態に陥った患者はショック状態や精神的混乱があり、息苦しさにうなり声を上げたり、来院時に意識を失ったりしている場合もあるという。
ところが、新型コロナウイルス感染症による肺炎の患者においては、血中酸素濃度が50パーセントと著しく低くても、低酸素血症に特有の息苦しさを患者が感じない事例が報告されている。胸部レントゲンでは一見ひどい肺炎であっても、多くの患者は呼吸のペースが速い以外は苦しいと感じない様子で、スマートフォンをいじる余裕まであるという。息苦しさを感じるころにはすでに重度の肺炎に進行してしまっているというわけだ。
このような「無症候性低酸素症」の患者の容態を見極める上で役立ったデヴァイスが、指に装着するだけで簡単に血中酸素飽和度と心拍数を測定できる小型のパルスオキシメーターだったのである。