バイオテロを目的としたものでなく、純粋に平和目的で行われている研究の過程で、思いもかけない性質の遺伝子組換えウイルスができてしまい、バイオテロリズム関係者を驚かせました。
このグループは遺伝子組換えによるネズミの不妊ワクチンの開発を行ってきています。これでもって食糧を食べ荒らすネズミが増えるのを抑え、食糧問題の解決に貢献しようという訳です。
しかし、ネズミには人間のようにワクチン投与はできません。そこで、ネズミに自然感染を容易に起こすウイルスをZP-3遺伝子の運び屋(ベクター)とする計画が立てられました。すでに、このアイデアはキツネのような野生動物への狂犬病ワクチンに応用されています。これをヘリコプターで大規模に森林中に散布した結果、フランス、ベルギー、スイスなどでは狂犬病のキツネの発生はほとんど見られなくなりました。
この組換えウイルスをマウスに接種してみたところ、思いもかけない結果になりました。
普通のマウスポックスウイルスで免疫を与えておいても、この組換えウイルスは致死的感染を起こしたのです。
世界中で同様に多くの組換えウイルスがこれまでに作られています。しかし、ウイルスの病原性が低下することはあっても増加した例はありませんでした。今回できたのは単に病原性が強くなっただけでなく、ワクチンによる免疫も乗り越えることができました。