「だから片上君が東大に合格したと聞いたときも、自分もちょっと勉強したらそれぐらい合格できるんじゃないかと思ってました。中卒のくせに。大学受験浪人中の姉からはえらい怒られましたけれど」
奨励会三段のときに、羽生善治が七つの将棋タイトルを独占する「七冠」という前代未聞の偉業を達成した(96年)。将棋界は大いに沸いたが、山崎はひどいショックを受けていたという。
「何か喪失感みたいなものがあったんですよ。だから七冠目のタイトル戦も『負けろ!』って、ずっと祈ってましたね」
山崎にとって羽生は憧れの棋士ではなく、倒すべき相手だった。