2021年2月、ボーイングの株主が同社の取締役会を相手に訴訟を起こした。取締役会が監督義務を怠り、2018年と19年に計346人の犠牲者を出した737MAXの墜落事故の前後に会社の安全対策の責任を問わなかった、と主張している。

「安全性はもはや取締役会の議論の対象ではなく、ボーイング社内には、737MAXに関する安全性の懸念が取締役会やその委員会に上がってくる仕組みはなかった」。120ページに及ぶ訴状は、そう指摘している。

 ボーイングの戦略は、航空機の総合的なコストを低く抑えるために、操縦訓練のコストを最小限にするものだった。これはパイロットが100%の有効性を発揮して、機体を自動制御するMCASシステムの誤作動を4秒以内に修正できるという、非現実的な予測が前提となっていた。

 その結果、数百人の命が犠牲になり、数十億ドルの損失を出して、悪化したイメージをいまだに回復できないなど、さまざまなコストが生じた。

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