金星の表面温度は平均で420℃以上あり、密度の高いその大気は地球の海抜ゼロ地点における気圧の90倍を超える表面気圧を生む。しかも雲は80パーセント以上が硫酸だ。
この過酷な環境が、わたしたちがこれまで金星をあまり研究できなかった理由の一端である。金星には、わたしたちが送り込む宇宙探査機を溶かして墜落させるという厄介な習性があるのだ。
しかし、金星の大気はそれほど恐ろしいものではないかもしれない。金星の荒涼たる地表から31km上空の雲は気温が30℃、気圧は地球と同様である可能性がある。地球の大気圏に微生物が住んでいることはすでにわかっており、かつて金星がもっと住みやすい場所だったころに地表で暮らしていた生命体が大気圏へと移動し、地表の条件が悪化するなか大気圏に留まった可能性はある。