2009年のビル・ゲイツによるTEDトークがその好例だ。

 ビル&メリンダ・ゲイツ財団によるマラリアの蔓延を抑えるための活動を発表する際に、ゲイツは次のように述べた。「ご存じの通り、マラリアは蚊を媒介に感染します。ここに、何匹か持ってきました。皆さんに体験していただくためです」。そして、彼は舞台の中央に歩いていき、マラリアに感染していない蚊が入った小さな瓶のふたを開けた。

「会場で蚊を少しだけ自由にさせましょう」

 この瞬間で、ゲイツは聴衆の心を見事にとらえた。そこに驚きがあったからである。聴衆は一般的なパワーポイントによる発表を予想していた。グラフやデータをたくさん見せられるのだろう、と。ところが聴衆は、いきなりテーマを体感し、感情を揺さぶられる体験をしたのである。

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