注目すべきなのは、ロンバルディア州とヴェネト州の違いだ。この2つの州は地理的に隣接していて、社会的・経済的な状況もよく似ている。
欧州でも有数の裕福で経済的に発展している地域のロンバルディア州は、新型コロナウイルス感染症の打撃がことのほか大きかった。3月26日の時点で、人口1000万人の州で3万5000人近い感染者と5000人の死者が発生している。
ヴェネト州の状況は対照的だ。初期には感染地域が拡大し続けた時期もあったものの、人口500万人の州で感染者は7000人、死者は287人にとどまっている。
感染の封じ込めに向けてより積極的な措置を講じたのはヴェネト州だった。
以下のようなことを行った。
・早い段階で、症状のある人だけでなく、症状のない人も対象にして大々的に検査を行った。
・感染している可能性のある人を積極的に追跡した。検査で陽性が明らかになった人がいれば、家族や周囲の人たちもすべて検査した。検査キットが足りない場合は、自宅待機を指示した。
・自宅での診断と治療を重視した。可能な場合は常に、患者の自宅で検体を採取し、それを地域の大学のラボで解析した。
・医療従事者や、そのほかの必要不可欠な仕事に携わっている人たちを徹底的にモニタリングし、その安全を守るよう努めた。医療従事者以外では、たとえば、リスクの高い人と接する人たち(高齢者施設の職員など)、不特定多数の人と接する職種の人たち(スーパーマーケットの店員や、薬局の従業員、児童保護・高齢者保護に関わる人たちなど)が対象だ。
一方、ロンバルディア州は、中央政府の公衆衛生当局が示した指針に従い、検査に関してより抑制的なアプローチを選択した。これまでに実施した検査の件数は、対人口比でヴェネト州の半分にとどまる。発症者の治療に専念し、感染者の積極的な追跡や、自宅での療養とモニタリング、医療従事者の保護にはあまり力を注いでいなかった。