約6,000年前、現在のデンマーク南部の海沿いの沼地で、黒髪で青い目をした浅黒い肌の女性がガムを口の中に入れた。ちなみにそれはスペアミントガムではなく、あまりおいしくないに決まっている黒褐色の樹脂の塊で、カバノキの樹皮を煮詰めたものだった。
彼女が生きていた時代、道具をつくる際の強力瞬間接着剤として、カバノキの樹脂はなくてはならないものだった。しかし、樹脂は冷えると固まってしまうので、彼女や仲間たちは樹脂をかんでからでなければ接着剤として使えなかった。カバノキの樹脂には殺菌効果があるので、古代人は虫歯の痛みを和らげるためにそのガムをかんでいたかもしれない。
やがて、彼女はガムを吐き出した。6,000年後、科学者は発見したガムの遺伝子検査を実施し、ガムをかんでいた人物のゲノムを完全に解読した。そして、その人物が女性であることや、彼女の肌や髪や目の色まで特定した。