ポリヴェーガル理論は、人の協調反応と防衛反応の両方が、自律神経系の一つ、副交感神経の代表的な神経である「迷走神経」によって調整されていることを説明している。迷走神経とは、脳と心臓、胃腸、その他の臓器とを双方向でつなぎ、人が脅威に晒された時に反応を起こさせる神経路である。
この反応は、3つのレベルに分けられる。
1つ目は、我々が第1レベルと呼ぶ「不動化」である。極度の脅威下では、爬虫類、哺乳類、そしてヒト(人間)は虚脱し、死んだふりをする。これは自然な適応反応である。たとえば、ネコに捕えられたネズミは、反射的に「シャットダウン」して、死んだふりをする。するとネコはネズミへの興味を失い、ネズミは逃げ出すことができる。人間がこのように反応することは稀であるが、まったくないわけではない。
第2レベルは「可動化」である。脅威にさらされると、心臓の鼓動が速くなる。交感神経系が活性化され、体はコルチゾールとアドレナリンを分泌し、行動を起こす準備をする。これが闘争・逃走反応である。攻撃的になるか、さもなければ逃走する。
反応の第3レベルは、他者と関わり、つながる「社会的関与」である。再び安全が確保されたと感じると、人間の体は違う反応を始める。このレベルでは、哺乳類固有の迷走神経路が機能し、闘争・逃走反応と不動化の両者の特徴である防衛反応を鎮める。身体はオキシトシンを分泌する。この状態では、他者に対して心を開き、協力や学習を促すつながりを感じる。