ロボットをプログラムして動かす従来の方法は、現実世界の仕組みに関する前提(例えば硬い床やじゅうたんに対して足の捉え方はどう違うのか、といったこと)を機械に取り込み、それを逐一指示するというものだった。しかし、幼児に「階段を上るには腕や足をこう動かすんだよ」と言う場面を想像してみてほしい。幼児は指示には従わないだろう。
幼児は試行と(ときには痛みを伴う)過ちを通して学ぶ。どのような面が滑りやすくどのような面がでこぼこしているか、そしてそれに応じてどう動きを対応させていくのか、経験を通して学ばなければならないのである。
それと同じように機械も、シナリオに従うだけでは簡単には環境に適応できないのだと李は言う。なぜなら現実世界の力や物体の表面は予測不可能で、とても複雑だからだ。「これらの仮定は自然界ではすべて完全に崩壊します。自然界の完全な情報など存在しないからです」