わたしはスタンフォード大学のVRラボを訪れ、ヘッドセットをしてサンゴ礁の海を泳ぐ体験をさせてもらいました。サンゴがぎっしり生えたその冷水サンゴ礁は、初めは見るからに元気で、近くを鮮やかな色をした魚たちが泳いでいました。ところが、2100年に近づいていくと、目の前に広がっているのは無残に荒れ果てたサンゴ礁になっているんです。海洋の酸性化が進んだ結果です。いまの状況が続けば、つまり現行の二酸化炭素排出ペースが続けば、これが未来のシナリオということになります。VRを用いた同じような実験では、サンゴ礁の破壊に関するドキュメンタリーを観たり、それについての文章を読んだりしただけの人に比べて、VRでそれを体験した人はサンゴ礁の保全活動に対する関心が長く続き、積極的に行動しようとすることがわかっています。