単純な仕事は誰にでもできるかというとそうでもありません。若い内は、専門的なこと(自分が得意なこと)をやりたい、企画をやりたい、商品開発をやりたい、場合によっては社長をやりたい、というように考えがちです。だから誰にでもできる単純な仕事はやりたくないと。
しかし世の中に何一つ単純な仕事はないと思って下さい。
たとえば、コピー一つ取る場合も、そうです。
私はコピーを他人にとってもらうとき、コピー初級、中級、上級というように3段階の評価基準をもっています。
「コピー初級」は、機械の操作をただ単に知っているだけ。他人に聞かなくてもとりあえず、コピーを取れる段階。
「コピー中級」は、たとえば、10枚のコピーをするとき、一枚目をすって、紙の傾き、文字や写真の濃度を確かめてそれから残りの九枚をすれる人。
「コピー上級」は、ちょっとした上司の依頼の紙にも目を通し、「この人はこんな文章を書くんだ」とか「こんなことが今会社で話題になっているんだ」というように、内容についての関心を持ちながら印刷できる人。場合によっては、書類の不備(誤字や脱字も含めて)を指摘することもできる人。
私は、コピー能力をこのように三段階にわけて評価しています。
これは、私が頭の中で勝手に考えた三段階ではありません。
世の中には、実際にコピーを頼んだら、同じ「単純な」仕事をしても、このようにはっきりと違う仕事の仕方でこなす人がいます。この三段階は、実際に私が出会った人たちの三段階です。
一見、単純に見えるコピー作業の中にも、考え始めるときりがない仕事の諸段階が潜んでいます。
単純な仕事を単純にしかこなせない人は、いつまで経っても単純な仕事しか与えられません。
だから、「コピー上級」の人になれば、会社は、こんな人にコピーを取らせ続けるのは失礼だし、もったいないと逆に思い始めます。
そのようにして、コピー上級の人は“出世”をしていくわけです。