あるところに、生まれてから一言も喋らない男の子がいました。
その子が10歳の誕生日を迎えた日、生まれて始めて口を開き「お母さん」と言いました。
喋らない子供が生まれて始めて言葉を口にしたことに、両親はたいそう喜びました。

しかし次の朝、その子のお母さんが原因不明の病気で急死していたのです。
男の子はそれからまた口を閉ざしてしまいました。
数日後、男の子が再び言葉を口にします。「おじいちゃん」と。
すると次の日、その子のおじいちゃんが交通事故にあい、亡くなりました。
また数日後「おばあちゃん」と。次の日におばあさんが亡くなりました。
男の子のお父さんは流石に「おかしい」と気づきました。お父さんは「残ったのは俺しかいない。
次にこの子が口を開く時、俺が死んでしまうに違いない」とたいそう戦慄を覚え、
恐怖に苛まれる毎日を過ごしていました。
しかし、男の子はまた長い間、口を開こうとはしませんでした。
お父さんもいつしか取り越し苦労だと思いなおし、月日は流れました。

男の子が12歳の誕生日を迎えた朝。
朝食を父子2人で食べている時に男の子は突然「お父さん」と口にしました。
お父さんは「俺が死ぬのか?いや、取り越し苦労に違いない。」と、思い直しました。
その日からお父さんは仕事の出張で数日間留守にすることになっていたので、
親戚に男の子を預けて出かけました。
仕事中も出張先で今までのことを思い返し、「あの子に呼ばれた家族は、
一人も漏れなく次の日に死んでしまった。
偶然で片付けられるのか?俺は明日死んでしまうかも知れない。」と
次第に心が恐怖に支配されていきました。
次の日、お父さんはとうとう耐えきれなくなり、
出張先のホテルから一歩も外に出ないことにしました。
ホテルの部屋でただ独り、恐怖に震えながら・・・
「あの子は呪われた子だったんだ・・・俺は・・・死ぬかも知れない・・・」

その日・・・結局夜まで何事もおきませんでした。お父さんは「やはり今までの事は偶然だ。
可愛い我が子を呪われた子だと思ってしまった自分は父親失格だ。情けない。」と反省しました。
お父さんは結局、無事に出張から戻ることが出来ました。
「呪われた子」と思ってしまったことを反省し、
家に帰ったら我が子を力いっぱい抱きしめてあげようと思っていました。
会社から自宅への帰路、自宅の方向に葬列が出来ているのに気付きました。
お父さんは嫌な予感がして、駆け足で自宅に向かうと自分の家の隣でお葬式をしていました。
地域の知り合いおばさんとに出会い「どなたが亡くなったんですか?」とお父さんが聞くと、
そのおばさんは言いました・・・

「ああ、あなたが出張に行った次の日に、あなたのお隣のご主人が急死されたのよ」

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