ポールとワッツは貧しい炭鉱夫だった。
貧乏な暮らしに業を煮やした二人は未開の国であるロシアに移住し、働こうと決めた。

ポール:「決めたはいいが、僕たちはロシアのことを何も知らない。
      もしロシアがこの国よりも貧しい国だったらどうする?」

ワッツは頭を捻った。

ワッツ:「そうだな・・・ポール、君には妻も子供もいる。君にとってはリスクが大きい話
     だ。だからまず僕がひとりで向こうへ行き、あちらの事情を手紙に書く。
     君はそれで判断すればいい」

ポール:「しかし、悪口を書いた手紙を検問官に見られたら君はタダでは済むまい」

ワッツ:「じゃあこうしよう。僕はロシアがどんな国だろうと、ロシアを褒めて書く。
     手紙が黒のインクで書いてあれば、ロシアは素晴らしい国だと受け止めたまえ。
     逆に赤のインクで書いてあったら内容とはかけ離れた貧しい国という意味に取
     ってくれ」

ワッツはそういうとロシアに旅立っていった。
それから3ヵ月後、ポールの元に手紙が届いた。送り主はワッツである。
手紙には黒のインクでこう書いてあった。
黒のインクということは・・・素晴らしい国なんだ!とポールは喜びながら読んだ。

『親愛なるポール。この国は素晴らしい!
 向こうに着いてすぐ割りの良い仕事を紹介してもらい、
 広くてきれいな住処を与えてもらった。食料と酒はふんだんにあるし、
 何より国自体に活気がある!
 仕事はすこぶる順調で、来月にはクルーザーを買って貸し別荘で余暇を過ごすつもり
 だ。一部のマスコミが『ロシアには物資が何もない』なんて書いてるが、
 それは大きな間違いだ。この国では欲しい物は何でも手に入る!
 手に入らないのは赤のインクくらいのものだ』

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