記者は、ようやく、アメリカ大恐慌を乗り切って大富豪になった男のインタビューに成功した。
富豪:「わしは、スラムでも一番の貧乏な家庭に生まれ、15歳の時に天涯孤独の身と
なり、無一文で世間の荒波に追い出されたのじゃ」
記者:「さぞ、ご苦労をされたのでしょうね」
富豪:「大変な苦労じゃったよ。そして、たゆまぬ努力だった」
記者:「是非、小誌の読者にもその成功の物語というものを教えていただけませんか」
富豪:「いいとも」
老人は昔を思い出すように目を閉じた・・・
富豪:「大恐慌の時代、
父母が死んで、まだ幼いわしが住んでいたアパートを追い出された日。
わしのポケットには、もう5セント硬貨が一つしか残っていなかったのじゃ──
──わしは、腹が減って腹が減って、5セントで汚いリンゴをひとつ買ったのじゃ。
さて、齧り付こうとして、袖でリンゴの汚れを拭いたら・・・
実に綺麗でうまそうなリンゴになった。
わしは、そのリンゴを食べないで10セントで売ったんじゃ。
そして、その10セントでまた汚いリンゴを2個買って──
もう、分かるじゃろう?わしは、その時、商売というものを理解したのじゃよ」記者:「感動的なお話しです!」
雑誌記者は叫んだ。
富豪:「うむ。こうして、1週間後には、リンゴを売った金は、なんと、23ドル50セントにもなったんじゃよ」
記者:「なるほど、地道に努力されたのですね。」
老人は続けた。
富豪:「そして、その次の日・・・
──大叔父が死んで、5000万ドルの遺産を相続したのじゃ」