例えばカジノ経営の米ハラーズは、「顧客を逃がさずにどこまでお金を搾り取れるかについて、実に高度な予測を使っている」という。スロット
マシンなどの使用状況や勝ち負けなどをリアルタイムで監視し、その顧客の年齢や居住地の平均年収といったデータと組み合わせて分析する。これにより、顧客
がお金をすっても楽しんでまた来店するのはいくらまでかを予測し、「この魔法の損失額数値を『痛みポイント』と呼んでいる」(46ページ)という。このカジノでは、顧客が痛みポイントに近づくと、店のおごりでレストランに案内するといったこともしているそうだ。これについて著者は、
「(中毒性もあり身の破滅につながりかねないギャンブルを)ハラーズ社がさらに心地よくしようとしていることには困惑を覚える。でもハラーズの痛みポイン
ト予測のおかげで、顧客の幸せ度はおおむね上がる」(47ページ)と述べている。