筆者は所得税を10%フラットにするのが理想だと考えている。これで個人に対する課税では香港やシンガポール、それに韓国や台湾といったアジア諸国に対抗
できる。また日本は深刻な財政問題を抱えており、歳入を増やすことが大きな課題だが、所得税を定率の10%にすることによって大幅な税収アップが可能であ
る。

フラット10%の課税で大幅な税収アップが期待できるのだが、それは何も労働インセンティブが高まるだとか、ラッファー・カーブを持ち出すまでもなく、現
在の日本の平均所得税率はそもそも10%よりはるかに低いという事実による。国税庁による平成21年分民間給与実態統計調査によれば、平成21年末での給
与所得者数は5400万人。民間の事業会社が払った給与総額は192兆円。192兆円から支払われた所得税は7.5兆円。平均所得税率はなんとわずか
3.9%なのである。つまり所得税率を10%に引き上げれば、10兆円以上の税収増が簡単に実現できるのである。

日本は低・中所得層の税負担が極めて軽い一方で、所得税の最高税率(所得の1800万円以上の部分にかかる税率)が住民税とあわせて50%と世界で最も重
い。大多数の日本の給与所得者が所得税を払っておらず、過酷な税が課される高所得者層の人数は非常に少ないので、平均した所得税率はおどろくような低率と
なっている。これが高所得者層の海外移住を加速させ、また、高所得者の海外から日本への流入を阻んでいる。そして結局はそういったツケが低・中所得層に
返ってくるのである。愚かなポピュリズム政治ここに極まり、だ。

社会の共通経費を皆でフェアに負担しあうのは当然のことである。一部の高所得者にだけ過酷な重税を課すというのは、いかなる理由をもってしても正当化する
ことはできない。また、そうやって金の卵を生むガチョウを日本から追いだしていくことは、結局は税負担を巧妙に逃げたと思っている層をも苦しめていくとに
なるだろう。

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