「クリスチャン、君のおかげか、あるいはディック・チェイニーのおかげで、僕は一命を取り留めることができたよ」
本作の監督&脚本家であるアダム・マッケイは、2018年1月、心臓発作で病院に担ぎ込まれた。その1週間後、ディック・チェイニーを演じたクリスチャン・ベールに電話し、感謝の意を述べた。といっても最初は何を言われているのかわからなったベールは、アダム、もうホントに大丈夫なのか?と質問を何度も繰り返し、10分後、ようやく事態が飲み込めたところで、二人揃って大爆笑したのだという。安堵からの哄笑だった。
「君か、チェイニーのおかげ」というのは、若い頃から心臓病を患っていたチェイニーが発作で倒れるシーンを撮影していた際、チェイニー役のベールがマッケイに、心臓発作の典型的な症状として、吐き気がするくらい胃がムカムカして痛くなることを伝えていたからだ。ベールはこの症状を、役作りの際にヒアリングした心臓外科医から聞いていた。心臓発作というくらいだから、てっきり心臓のある胸が痛くなるくらいのものだとばかり思っていたマッケイは、研究熱心なベールの様子に感心した。そして、結果的にこの時のやり取りが、マッケイを救ったことになる。