『まったく業界に興味はナイ。だけど業界1位の企業』って、何となく安心するから受けてしまいがちである。実際の仕事ぶりを学生に想像しろという方が無理なはなし、なるべく失敗しないようにと考えると、無数にある企業から効率よく受けていくにはいろんな業界の1位を狙っていく方法は、ある意味で正攻法である。
私もそんなノリで受けたことがあり、最初は学生8人くらいの集団面接だった。順番に志望理由を聞かれていくなか、周囲の立派な意見に困り、最後の番となった私は正直に”まったく興味がない”ことを申告した。その刹那、会議室は静まり返ってしまった。
では、君はなぜ受けにきた? 怖い目つきの面接官。「業界1位には何か理由があるはず。それを探りにきただけ」と答えた。その途端、面接官はニヤ~リと笑い、深いため息をついた。そして「タバコを吸う奴いるかぁ~?」と、おもむろに灰皿を机の上に置き、気持ち良さそうに一服を始めた。明らかに面接官の雰囲気が変わった。学生はみな慌てた。面接中にタバコなんてとんでもない! とばかりに首を横に振ったが、全員スーツの胸ポケットにはしっかり”タバコのふくらみ”が見えるのだが・・・。
では遠慮なく・・・と、私はひとりタバコを吸い始めると、また面接官がニヤ~リと笑った。その後は面接官と私、ふたりでもうもうとタバコの煙をくゆらせながらのヘンな面接に。どうやら面接官は見え見えのウソが嫌いなタイプ、とてもストレートな性格の人だったようなのだ。この時点から、面接官は業界にまったく興味のないという私ひとりにしか話しかけなくなっていた。結果、面接通過。
バカ正直も状況次第。運が良ければ、こんなケースもある。後から面接官と話したところ、こんなことを言っていた。「仕事とはいえ、何百人もつまらない学生を見なきゃならないのは、疲れるんだよ。飽きてくるんだよ、似たような学生と、同じようなウソに」と。