人間は自分が決めたことには責任をとらなければいけないと考える傾向が強い。それが最初に提示された条件に予想外の変更が
加えられたとしてもそう考える。こうした心理を応用したのが、「ロー・ボール・テクニック」である。ロー・ボール、つまり、受け取りやすい
球をまず捕らせてしまえば、次の要求も受け入れざるを得ないという意味である。心理学者のホーニックたちは、このテクニックを調査のリクルーティング(被験者を集めること)に応用できないかと考え、次のような
実験をした。まず18歳以上の男女を無作為に選び、彼らに自分は調査の専門家であることを伝え、アンケートへの協力を依頼する。ただし今で
はなく、被験者が望む時間に改めて電話するという手はずにする。これでOKと言った人に、すぐさま電話をかけ直して、実は個人のプ
ライベートな情報をお聞きしたいという趣旨を言い忘れたと付け加える。驚くべきことに、最初にOKと言った人の70%がプライベートな情報提供にも承諾し、所得やセックスなどについての質問にも答えたと
言う。