ハンガリーの小規模なアルプス分遣隊の若い中尉が、スイスでの軍事演習中、凍てついた原野に偵察隊を送り込んだ。急に雪が降りだし、丸二日降りつづけた。偵察隊は戻らなかった。中尉は心配し、部下を死に追いやってしまったのではないかと恐れた。ところが、三日目に部隊は帰還した。
「どこにいた? どうやって帰ってきた?」
「ええ、道に迷ったと思い、雪がやむのを待っていました。やがて一人がポケットに入っていた地図を見つけました。それで一同落ち着きを取り戻しました。キャンプを設営し、雪嵐がやむまで持ちこたえました。それから地図を見て、自分たちのいる方位を定めました。そしてここにたどり着いたというわけです」
中尉はその大役を果たした地図を借りて、よく目を通した。驚いたことに、それはアルプスの地図ではなく、ピレネーの地図だった。

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