男性の立原さん(仮名)が成田空港から東関東自動車道を都心に向かって走っている時、真正面から車のタイヤがバウンドしながら跳んできたそうです。左車線に回避しようと思ったものの、そこにはトラックが走っていたため避けきれず、立原さんの車はそのままタイヤと衝突してしまいます。その事故は前を走っていた車のスペアタイヤが外れたことが原因だったのですが、立原さんの車はタイヤとの衝突によりパンクしてしまいます。タイヤを飛ばした運転手は、立原さんの車のパンク修理を手伝ったものの、名前も告げずに立ち去ってしまったそうです。これは紛れもない“当て逃げ”です。
■損保会社のあまりにもひどい対応
立原さんはA損保の車両保険に入っていましたので、修理工場から修理の見積書をとり、230万円の修理費をA損保に請求しました。
ところが、A損保から返ってきた回答は驚くべきものでした。
“タイヤは道路上を飛んできたのではなく、元々路上に寝ていた(静止していた)もので、立原さんには前方不注視の過失がある”として支払不能を申し入れてきたのです。もちろん立原さんは怒ります。どうにかしてタイヤが寝ていたものではなく、飛んできたものだと証明しようと、機械システム工学を専門とする大学教授に鑑定を依頼しました。
■法廷で損保会社が言い放ったとんでもない一言
無事に大学教授から“タイヤが寝ていたものではない”という鑑定書をもらった立原さんは、A損保を相手に訴訟を起こしました。
しかし、法廷で鑑定書をつきつけた立原さんにA損保の担当者が言ったのは「私どもでは、そちらの『鑑定書』を信用していませんから」の一言。
立原さんはさらに追及し、A損保の保険約款の“『飛来中または落下中の物が衝突』してついた損傷には保険金を出す”という文言と照らし合わせて保険金支払いの妥当性を主張します。
ところがA損保の言い分はさらにとんでもないものでした。
タイヤがバウンドして立原さんの車に衝突したことを認めたうえで「バウンド中というのは保険約款の『飛来中または落下中の物が衝突』にはあたらない」と主張してきたのです。
結局、裁判でA損保の主張は通るはずもなく、立原さんは一審で全面勝訴し、A損保による控訴審で遅延損害金込みでの和解が成立したそうです。