・ネズミはまず3つのグループに分けられ、第1のグループは水槽に放り込まれて溺死するまでの時間を計測された。この実験によれば、その時間は60時間だった。第2のグループはまず逆さ吊りにされてストレスを与えられ、じたばた暴れるのをついにやめた時(つまり、抵抗をあきらめて副交感神経の揺り戻しに襲われている時)水槽に放り込まれた。このグループは20分しかもたずに溺死してしまった。第3のグループも逆さ吊りにされ、じたばた暴れるのをやめるまで放置されたが、そこで水に放り込まれる代わりに元のケージに戻された。その後、また逆さ吊りにされ、じたばた抵抗するのをあきらめると今度もケージに戻された。一日のうちにこれを経験したネズミたちは、この白衣の人間は自分たちを暴れさせたいだけらしい、とすれば大した事はないと思ったようだ。だがそう思った3度目、今度は居心地のいいケージに戻されるのでなく、水槽に放り込まれた。するとネズミたちは頑張って泳ぎ続けた、60時間も。第2グループのネズミたちと違って、この第3グループはストレスの予防接種を受けていた。それまでに2度ストレスにさらされ、そのつど元気に生き延びてきたのである。というわけで、3度目に逆さ吊りにされた時にはもう対した苦痛でなくなっていたから、ストレスにさらされなかったネズミと同じように頑張ることができたわけだ。