田崎さんはマーグリスを使ってこんな話をしています。

問題は性の起源。

マーグリスによれば性と生殖は明確に区別される。

性とは「二つ以上の源泉に由来するDNAの組換え」。
生殖とは「個体数の増加」。

どういうことか。

この区別の意味を理解するのは、「老化とは何か?」から話を始めるのがよいでしょう。

老化というのはそのメカニズムがよく分かっていなくて、なぜ生物が老化するのかという問題はまだ謎めいているところが多いらしいです。

で、老化発生の原因として有力視されているのが、DNA損傷蓄積説というものらしいです。

DNAというのは紫外線なんかによわくて、すぐに損傷する。

するとプログラムが狂ってしまって、自己複製がうまくいかない。で、老化すると。

どうやら性というのは、この老化に対抗するために出てきたシステムのようなのです。

どういうことかというと、DNAは4種類の塩基からなる二重螺旋ですね。

4種類の塩基は対になるものが決まっている。アデニン(A)はチミン(T)と、グアニン(G)はシトシン(C)と対になる。

つまり、一方にATCCという並びがあれば、他方はTAGGという並びになっている。

DNAが複製されるときは、二つの鎖がほどけて、それぞれが一本になり、その両方に対応する塩基がくっつく。

DNAはこのようにどこか一部が壊れても、同じ情報が再生できる安定性にその秘密があるらしいです。

でも、鎖の一本だけが痛んでいるならそこを切り離してなんとか修復できるけれど、両側が損傷したりして、どうにも修復できなくなったときはどうすればよいか。

別の個体に由来するDNAまたDNAの断片を使うという方法がある。

どうやら、これが性の起源らしい。

細菌のような単細胞生物は他の細菌と接合したり、死んだ細菌の放出したDNAを取り込んだりできる。

つまり、他の個体からDNAをもらい、それによって自分のDNAを修復する。

単細胞生物の場合、そのようなセックス(!)によって、分裂能を回復することができる。

つまり

若返る!

これを田崎さんはこんな風に説明しています。

「単細胞生物では、セックスによって自分自身が自分の子供になってしまうのだと考えるとわかりやすいかもしれない。そうして一種の生物時計をゼロに巻き戻
すことができるのである。私たち〔多細胞生物〕の場合、幸か不幸か、ゼロからスタートする個体と私たちは別の個体なのである」(p.47)。

これは性についての見方を一変するものだと思います。

性とは「二つ以上の源泉に由来するDNAの組換え」でした。

単細胞生物はDNAの取り込みとそれによるDNAの組み替えによって、損傷したDNAを復元する。そして若返る(子供として生まれ変わる)。

生殖は分裂によって行う。

だから性と生殖が別。

対し多細胞生物の場合、DNAの取り込みと組み替えによって若返った細胞は、新しい個体として生まれる。

だから、ここでは性が生殖と切り離せないように見える。

でも、

そもそも性(セックス)というのは

或る個体が老化によってどうしようもなくなったときに

生き延びるために出来上がったシステム。

つまり、

種の存続のためじゃなくて

個体の生き残りのためにできたシステムだということです。

性と生殖とを切り離せないものとして考えるのは

人間中心主義どころか

多細胞生物中心主義であるわけです。

俺等の方が後釜なのに、

先輩たちが作ったシステムを誤解して偉そうなことを言っているわけですね。

更新情報知らせます はい 不要