米Apple社は8月24日(米国時間)、以前から健康状態を懸念されていた、同社を象徴するリーダー、スティーブ・ジョブズが最高経営責任者(CEO)を辞任するという発表を行った。その後の時間外取引で同社株価は7.39%も下落し、時価総額は240億ドル(約1兆8400億円)減少した。

辞任のニュースによる下落の前、24日の終値は、前日より0.69%増の376.18ドルだった。

ただし、ジョブズ氏がCEOの職を離れるのは以前から予想されていたことだとして、アナリストらは株価下落を重要視していない。「率直にいうと、これで懸念が取り除かれる。いままでは、この日がいつやってくるのかが分かっていなかった。おそらくは最良の結果だ」と、米WP Stewart社のマイケル・ウォーカーはReutersの記事で述べている。

結局のところ、市場はすでにジョブズ氏のCEO辞任を織り込み済だったと、ウォーカー氏は話す。2004年に珍しいタイプの膵臓ガンと診断され、2009年には肝臓移植を受けたジョブズ氏は、今年1月17日に再び病気療養休暇に入っていた(日本語版記事)。

ジョブズ氏は、ビジネス史上でも最大の「カムバック」を果たした人物だ。同氏は自らが1976年に創設した会社を1985年に追放されたが、1996年に請われて同社に戻り、1997年にCEOになった。そのときマイケル・デルは、同氏だったら破産寸前のApple社をどう建て直すかと問われて、「私だったら閉鎖してカネを株主に返す」と答えたものだった。

しかしその後、Apple社は『iMac』や『iPod』、『iPhone』や『iPad』など、数々のすぐれた製品で成功を続け、長年のライバルであるMicrosoft社や、最近のライバルである米Google社を抜き去ってきた。すぐれたビジョンの持ち主であるジョブズ氏の下、Apple社は今年8月、米Exxon Mobil社を抜いて一時的に時価総額で世界一になった。[10日終値の時価総額が3470億ドル(日本円でおよそ26兆7000億円)で、Exxon Mobil社の約3480億ドルを抜いていた]

さらに同社は、今年7月末のある時点で、手元流動性で米国政府を上回った。Apple社には760億ドルの現金があったのに対し、ワシントンの米国政府はどんなに探しても740億ドル弱しか無かったのだ。

今後の同社の課題は、新しいリーダーの下で、これまでのような成功を続けられるかということだ。ジョブズ氏はCEO辞任を発表した手紙の中で、後任として、ティム・クック最高執行責任者(COO)を強く推薦した。ビジョンというよりは事業執行の能力で知られる(日本語版記事)クック氏だが、Apple社の取締役会はこの推薦を受け入れ、同氏をジョブズ氏の後継者に指名した。

ジョブズ氏は会長として残る。「私は今後のApple社が、最も素晴らしい革新的な時代を迎えると確信している。自分の新しい役割において、その成功に貢献することを楽しみにしている」とジョブズ氏は書いている。

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