・心理メカニズムは常に変わらない。手持ちの株の価格を買値と比べてしまうのだ。買値を基準にして、それより儲かっているか損をしているかで考える。もし株価が買値より高ければ、売り時だということになり、すぐに儲かると思うから売り急ぐ。反対に株価が買値より低ければ、損をしているわけだから、損がなくなるまでもう少し待ってみようということになる。こうして売り遅れるというわけである。
・Xという損がもたらす苦しみの度合いは、同じXという利益がもたらす喜びの二倍だということだ。多くの人は実際、勝ったら少なくとも十万円はもらえるのでなければ、負けたら五万円を失う賭けはしないだろう。
・損失嫌いは生来の特質であり、進化のうえでも古い時期に属するものだ。その起源は、オナガザルと人間が共通の祖先から枝分かれするより前、いまから少なくとも4000万年前にさかのぼる。この祖先の特質はまだ私たちの中に根を張っており。「ちまたの人」が「ホモ・エコノミクス」に進化するには、まだ年月がかかりそうである。