欧州はギリシャ危機への対応をめぐって迷走している。米国経済の手詰まり感も深刻である。いずれにも共通しているのは、「財政政策はもう使えない。金融政策は効かない」という政策的な無力感である。おそらく外部から見た場合、「先進国経済の中では、日本がもっとも安心感がある」という評価になるのではないだろうか。

ここへ来て、「オヤジ世代」としてはふと妙な感慨を覚えてしまう。「欧米に追いつき追い越せ」が国家目標であった時代は、それほど遠い昔のことではない。だから、われわれの体内には「欧米はどこへ向かうのか、従って日本は何をすべきか」式の行動パターンが沁み込んでいる。日本は欧米という模範を追いかければよく、問題が起きたとしても、その解決策は彼らの中に見出せるはずであった。

ところが現下の世界経済では勝手が違っている。今の欧米が直面している困難は別名を「日本化」と呼ぶ。それは経済の低成長化、低金利の常態化、不動産価格の低迷、雇用状況の悪化、財政赤字の増大、そして政治の機能不全などの一連の症状であり、日本のこの20 年ほどの軌跡とよく似ている。

皮肉な言い方をすれば、「欧米が日本に追いついてきた」という感さえある。むしろ欧米の側が、日本の経験の中から解決策を探さなければならない。ところが生憎なことに、日本側には答えがないのである。

日本は「課題先進国」と言われるようになって久しい。少子高齢化、金融危機、それに伴うバランスシート型不況、さらにそれに続く政府財政の悪化など、先進国における今日的課題はことごとく日本がトップランナーであった。もしわれわれが答えを持たないのであれば、欧米経済にも答えはないということになる。逆にわれわれに答えが提供できるのであれば、それこそが日本としての最大の貢献となるだろう。

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