スティーブ・ジョブズがなぜ黒のタートルを着ているのか、というのが記事になっていました。
Steve Jobs on Why He Wore Turtlenecks
これ読んでいてスティーブのメガネの話を思い出しました。書いて良いのかな、どうなんだろう、まあいいか。
スティーブがNeXTをやっていた頃、日本に来た時にたまたま入手したメガネフレームをとても気に入り、それをまた購入したいという話になったようです。
いろいろ調べた結果、そのメガネフレームは福井県の鯖江市のとあるメーカーで作られたものであることがわかりました。
面白いのはここからです。
スティーブは秘書の女性にそのメガネフレームを100個購入するように指示します。
指示を受けた秘書の女性はカリフォルニアのオフィスから鯖江市にあるメーカーに電話するわけですが、秘書はもちろん英語です。
その電話を受けた人は英語ができないらしく、会話がまったく成立しないままに電話を切ることとなりました。困ったのは秘書の女性です。
幸いNeXTの本社であるレッドウッドシティのビルには日本人のエンジニアがいました。秘書の女性はその日本人に頼んで鯖江市のメーカーに再度電話してもらうことにしました。
日本人のエンジニアが電話をしました。「こちらはカリフォルニアにあるNeXTという会社なんですが、うちの社長が日本を訪れた際に御社のメガネフレームをたいへん気に入ったので、100個ほど注文したいのですがいかがでしょうか?」と彼は言いました。
するとその電話をうけたメーカーの人は「えっ?100個?じゃあ前金だね。」と言いました。
前金・・・。
日本人エンジニアは秘書の女性に「前金だって」と告げました。さて、困ったのは秘書の女性です。あのスティーブ・ジョブズに「前金じゃないとだめだそうです」と言わなければならないのです。
結果は予想通りでした。「なんだって?前金だって?俺を誰だと思っているんだ!」
まあ、鯖江市でメガネフレーム作っている人でスティーブ・ジョブズを知っている人って当時は非常に少ないですよねえ・・・。仕方ないですよね。
その後、何度かのやりとりがあり、最終的に100個のメガネフレームがNeXT Japanのオフィスに届けられることとなりました。
とりあえず中身を確認、ということで届いた段ボールを開けるとビニール袋に入ったメガネフレームがたくさん入っていました。
その瞬間、普段からメガネを愛用している私の中に押さえられない衝動が生まれました。「100個も注文してまで欲しいメガネフレームってどんなんだろう」というものです。
見た目は普通の銀縁のメガネフレームです。でもきっと掛け心地が違うんだろうな、と思いました。
そこで、内緒で1個取り出して掛けてみました(ごめんなさい)。
・・・・。
特に何かすごいってわけでもなく普通でした。本当に普通。うーむ、このメガネフレームのどこに魅力を感じたのかまったくわかりませんでした。普通すぎる普通がよかったのかな。
その後メガネを戻し箱を閉じてカリフォルニアに送るわけですが、今回も黒のタートルシャツと同じように税関と揉めることになります。税関はメガネフレームが100個もあると「業務輸出だ」と言うわけです。当然ですね。
「いや、信じられないかもしれないけど個人がひとりで使うんです」「いったいどこの世界に一人でメガネフレームを100個使うやつがいるんだ」「いや、ほんとに個人なんですってば」といったいつものやり取りが繰り広げられます(一部誇張して書いています)。
ということで、その後ずっとその福井県鯖江市のメガネフレームを使っていたのかどうかはわかりませんが、とりあえず日本からは100個送っています。
1995年とか96年ぐらいにカリフォルニアから100個のオーダーを受けた鯖江市のメーカーさん、あなたが送ったメガネフレームの送り先はスティーブ・ジョブズだったんですよ。