「今回のアルバムは、LAでミックスしたんだ。で、ある晩、仲間と飲みに出かけたのさ。すると、
あるバーで『あなたの音楽を聴いて、自分もバンドを始めました』と言ってきたヤツがいたんだ。
だから『そいつは光栄だ、ところでどんなバンドでやってんだい?』ってきいたさ。そしたら
『マルーン5のベーシスト』って言うじゃねえか。ハハッ、まったくどうしたら俺らの音楽を聴いて、
マルーン5になるんだよ!? 俺も飲んでいい気分になっていたこともあってさ、散々ヤツらの音楽を
けなしちまったんだ。口の悪さは生まれつきだけど、後で悪いことをしたなとも思ったな。
でもマルーン5じゃ仕方がないだろ!?
で、そのバーを出た後、とあるバカでかい豪邸でやってたプライベートパーティにはしごしたんだ。
その時にはもう最高に酔っていて、DJブースを占領してさ、ストーン・ローゼズの「アイ・アム・ザ・リザレクション」を
6回連続で掛けてやったんだ。これにはLAのヤツらもあきれるやらびっくりやらの大騒ぎさ。
しかし誰もこの曲を知らなかったっていうんだから、まったく情けねえ。
そんでもって、明け方になってこのパーティもお開きが近くなって、人がまばらになったんだ。そしたら、
例のマルーン5のベース弾きがそこにまたいるんだよ。『こんなとこで何やってんだ、俺を追いかけてきたのか?』
って聞いたら、『ここは僕の家なんです』だってよ。これには大笑いしたぜ!」──そいつは傑作な話だね。ところでノエルにとって、ストーン・ローゼズはどのくらい
重要なバンドなんだろう?「ビートルズと同じくらい、すごく重要なバンドだ。もしかしたらそれ以上かもしれないな。
だって彼らが俺をロックスターにしたようなもんなんだから。80年代、マンチェスターで
色々なバンドを見たよ。ジョイ・ディヴィジョン、ニュー・オーダー、ザ・スミス……、
でもどのバンドも“これは俺じゃない、しっくりこない”って感じだった。
ところがローゼズを初めて見た時、“これだ!”って衝撃が走ったよ。
こいつらは俺と同じだ、服装も、振る舞いも俺と同じだ。ちくしょう!
俺と同じようなヤツらがこれだけの人間を相手にロックを演奏してるじゃねえか!
だから“俺にもできる、できるはずだ”ってその時そう思ったんだ」