大正年間に、星印電明社、兎印中西魔法器製作所、市川兄弟商会(現・象印マホービン)、菊池製作所(現・タイガー魔法瓶)などが次々に誕生している。

 しかし、魔法瓶は庶民に手が届かない高級品だった。大正六年に米一升が二十三銭だったのに対し、魔法瓶は三合入り(五四〇cc)で一円二十五銭前後。このため、製品の大半は輸出に回された。輸出先は、中国、インド、東南アジアなど生水が飲めない地域が多かった。象印、虎印、鷲印など動物の商標を使う業者が多かったのもそのせいである。さらに強い動物で、「壊れやすい」といったイメージを払拭したいという思いもあったようだ。

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