「人間の非合理性」を科学する
「バットとボールはセットで1ドル10セントします。バットはボールより1ドル高い。ボールはいくらですか」
という問題を、有名大学の学生の5割以上が誤答する。こうした非合理性はどこから来るのだろうか。
筆者は最近『Wall Street Journal』紙に、ノーベル経済学賞を受賞した
プリンストン大学のダニエル・カーネマン教授が
一般向けに書いた新著『Thinking, Fast and Slow』を紹介するコラムを書いた。
プロスペクト理論[人間の心理的傾向を考慮した意志決定論]で有名な同教授による、素晴らしい本だ。
まずは、単純な算数の問題を紹介しよう。
「バットとボールはセットで1ドル10セントします。バットはボールより1ドル高い。ボールはいくらですか」
大多数の人は、すばやく自信を持って、ボールは10セントだと答える。しかしこれは間違いだ。
正しい答えはボールが5セントで、バットが1ドル5セントというものだ。
興味深いことに、高等教育を受けていても事態はあまり変わらない。
ハーバードやプリンストン、マサチューセッツ工科大学の
学生たちも、50%以上が間違った答えを出してくるという。
カーネマン教授は、上記のような問題を50年間にわたって人々に出してきた。
同教授のシンプルな諸実験は、われわれの思考についての考え方に深い影響を与えてきた。
哲学者や経済学者、社会学者たちはこれまで、人類を合理的な存在と考えてきたが、同教授とその同僚は、
われわれは自分で信じたいほど合理的な存在ではないということを明らかにしてきたのだ。
http://wired.jp/2011/11/01