彼はiPodに画期的な機能を搭載している。「オン」「オフ」のボタンをなくし、使いたいときに電源が入り、使わないときは勝手に電源が切れる。いまはおなじみになったが、iPodが登場した当初は誰もが驚いた機能だった。彼はなぜこの機能にこだわったのか。
〈「神を信じるかと言われれば半々というところだね。僕は、目に見えるものだけが世界ではないはずだとずっと思ってきた」
死に直面し、来世があると信じたい気持ちが強くなっているのかもしれないともわかっている。
長い沈黙が訪れた。
「でも、もしかしたら、オン・オフのスイッチみたいなものなのかもしれない。パチン! その瞬間にさっと消えてしまうんだ。
だからなのかもしれないね。アップルの製品にオン・オフのスイッチをつけたくないと思ったのは」〉