北朝鮮の金正日が死去し、三男の正恩が権力を継承することになりそうだが、この一家の名前のつけ方は、韓国・朝鮮の伝統から大きく逸脱している。それは親子で共通の漢字をつけていることである。
日本では織田氏の「信」、豊臣氏の「秀」、徳川氏の「家」のように共通の漢字を親子、兄弟、一族で共有することが多く、共有することで、一族であることを認識し、結束を図るという慣習がある。この共通漢字を「家字」という。しかし、韓国・朝鮮では、原則として、子孫が祖先と同じ漢字を名前につけることはない。絶対儒教の国である韓国・朝鮮では、同じ漢字をつけることは「不敬」「不遜(ふそん)」に当たるのである。
ではどうするか。原則として「木火土金水」のついた漢字を順番につけていくのである。
ある人が「木」とすれば「柱」「桂」「根」などの木偏の漢字をつける。その子の世代は「火」となるので、「煥」「煕」など火に関連する漢字をつける。さらにその子の世代は「土」だから、「培」や「基」など「土」が入った漢字をつけるという具合である。しかもつける位置は、2字の名前の上下を常に逆にしてつけていく。残りの1字が個人を表す。
これは、木は火によって燃やされ、火は土によって消され、土器は金属に勝てず、金属は水によって錆(さ)び、水は木に吸収されるという、5つのじゃんけんのような関係から、常に前の世代を超える存在になるという陰陽五行説の考えからきている。したがって同じジェネレーションは同じ漢字が1字ついていることになる。